男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-







「....。」

それから約数時間後。柚希と打ち解ける事ができ、色々話をしていた2人は寝る事にした。

ことりは、陽のベッドに入る。

床には布団を敷いて柚希が寝ている。

そう考えると変に意識をしてしまうのは普通だと思う。

「....。」

物音ひとつないシンとしている室内で、ことりは緊張して鼓動ばかりが早くなる。

もしかしたら、柚希に聞こえているんじゃないかと考えると顔が赤く染まった。

(私、何考えてるんだろう。)

早く寝ようとして、目をぎゅっと瞑るが寝れない。

柚希は寝てしまったのだろうかと疑問に思い、

そっと彼を見ると偶然彼もこちらを見ていた時だった。

ぱちり、と視線が合う。


「あ、まだ、起きてたんだ。」

「寝れなくてな。」

「俺も...。」


ことりは、柚希から視線を外すと寝返りをうち反対側の壁を見た。

もう一度目を綴じようと思った瞬間、目の前を黒い何かが横切る。

「っきゃあ!!」

思わず悲鳴をあげて飛び起きてしまった。

その悲鳴は女そのもので、柚希も驚いて起き上がる。

「陽?」

「ご、ごごごごごっ、」

「ご?」

(あーもう!お母さん、部屋掃除したって言ってたのに!なんであいつがいるの!)

「ゴキブリ!」

「...陽、お前、楽屋に出たゴキブリをスリッパで叩き殺していただろう。

どうして怖がるんだ?」

「ええっ!?絶対ありえない!スリッパでなんてっ、無理!どうにかして!お願い!」

パニックになったことりは電気をつけると、すがるように柚希の傍へと向かう。


柚希は陽の態度に違和感を覚えながら、ゴキブリを探すがいない。






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