男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
*
「....。」
それから約数時間後。柚希と打ち解ける事ができ、色々話をしていた2人は寝る事にした。
ことりは、陽のベッドに入る。
床には布団を敷いて柚希が寝ている。
そう考えると変に意識をしてしまうのは普通だと思う。
「....。」
物音ひとつないシンとしている室内で、ことりは緊張して鼓動ばかりが早くなる。
もしかしたら、柚希に聞こえているんじゃないかと考えると顔が赤く染まった。
(私、何考えてるんだろう。)
早く寝ようとして、目をぎゅっと瞑るが寝れない。
柚希は寝てしまったのだろうかと疑問に思い、
そっと彼を見ると偶然彼もこちらを見ていた時だった。
ぱちり、と視線が合う。
「あ、まだ、起きてたんだ。」
「寝れなくてな。」
「俺も...。」
ことりは、柚希から視線を外すと寝返りをうち反対側の壁を見た。
もう一度目を綴じようと思った瞬間、目の前を黒い何かが横切る。
「っきゃあ!!」
思わず悲鳴をあげて飛び起きてしまった。
その悲鳴は女そのもので、柚希も驚いて起き上がる。
「陽?」
「ご、ごごごごごっ、」
「ご?」
(あーもう!お母さん、部屋掃除したって言ってたのに!なんであいつがいるの!)
「ゴキブリ!」
「...陽、お前、楽屋に出たゴキブリをスリッパで叩き殺していただろう。
どうして怖がるんだ?」
「ええっ!?絶対ありえない!スリッパでなんてっ、無理!どうにかして!お願い!」
パニックになったことりは電気をつけると、すがるように柚希の傍へと向かう。
柚希は陽の態度に違和感を覚えながら、ゴキブリを探すがいない。