男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
色々話していくうちに、落ち着いてきたのか再びうとうとしてきた。
会話が途切れ、そのまま瞳を綴じた。
*
「陽、」
誰かが自分を揺すっている。
「ん...、」
「起きろ、遅刻するぞ。」
「...!」
ばっと目を開ければ目の前には柚希の顔があった。
困ったような表情をしている彼を見て、自分は相当寝ていたことに気づく。
「ご、ごめんっ!おはよう柚希!」
「あ、ああ。おばさんに言われて、先に朝食を食べた。」
「え、あ、うん!」
「先に一階にいるぞ。一緒に学校に行こう。」
「え?柚希の学校って?」
「お前が通う高校の目の前にある大学だ。知ってるだろう?」
じゃあ、先に下に行っている。
そう言い残してバタン、と部屋から出ていく柚希を見てことりははっとする。
自分はことりとして、自分が通う高校に行くつもりだったが
今日はそうすることは無理そうだ。
ことりは悩んだあげく、陽の学生服を手に取った。
(今日だけ、お兄ちゃんの学校に行こう...)
そうでもしなければ柚希に説明がつかない。
仕事が入ったと言っても、木村と住んでるんだ。
いずれ、バレる。