男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「お前、柚希と登校してただろ?」
「見てたの?」
「俺後ろにいたし!珍しいな〜!最近お前、楓とも仲いいだろ?」
「あ、まあ…。」
曖昧に返事をすれば、南は怪しい笑みを浮かべて、ことりの耳元に口を近づけた。
「郁が寂しがってたぜ?」
「え?」
郁が?
ことりが驚いた表情を見せれば南は彼の背中をばし、と叩いた。
「早く仲直りしろよ〜!コンサートも近いんだからさ。」
「…。」
郁と、喧嘩をしているつもりはないことりは戸惑った。
そういえば最近、郁の態度が自分によそよそしい感じがする。
先日楓と三人で食事をした時に、郁の様子が可笑しい事に気づいたのだ。
気づかない間に彼を傷つけていたのかもしれない。
今日、学校で会ったら話をしてみようと思った。
「お前の教室ここだろ?」
「え?あ、」
「じゃあ、またな!」
南は笑顔で走っていた。
一人教室の前に残されたことりは、戸惑いがちに扉を開く。
「!」
クラスメイトをみて、ことりは驚いた。
テレビで見たことのある顔ぶれが数多く居る。
さすが、芸能コースのクラスだと実感した。
緊張しながらも自分の席を探してうろうろしていると、知らない誰かが自分に挨拶をしてくる。
それに愛想笑いを浮かべて返事をしていると、既に登校していた郁と目があった。
(…同じクラスだったんだ)