男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「ど、どういう事だよ」
納得いかなかった。
急にムカつくといわれても、何が何だかわからない。
何処がムカつくとか、ちゃんとした理由を言ってほしくて、ことりは郁に答えを求めたが郁から返事はない。
「…。」
これにはさすがに、ことりも苛立ち始める。
「俺、郁に何かした!?」
自然と声が大きくなった。
それに反応したクラスメイトがことりに視線を向ける。
「…何もしてない。」
「じゃあなんで怒ってるんだよ!」
ことり自身も、どうして怒っているのかわからなかった。
自分の学校のクラスメイトが、自分の事を嫌ったり陰口を言ったりするのは気にしないし、どうでもいいと思う。
なのに、郁にたいしては違った。
…嫌われたくない。
「関係ないだろ!ムカつくからムカつくんだ!」
ガタ、と彼は立ち上がりムキになって言い返す。
普段クールな彼とは違う一面をみてことりは驚いたが怯まず言い返す。
「関係あるよ!!」
「ない。」
「ある!」
そう言い返した時、ふと南に言われた事がふと脳裏に過ぎる。
―――郁が寂しがってたぜ?
もしかして、本当に郁は寂しかっただけなのかもしれない。
…自惚れかもしれない。
けど、自分が郁に何かした覚えはなかった。
ことりは、そっと呟いた。
「…もしかして、寂しかった?」