男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
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あっという間に昼休みになった。
芸能クラスの為に昼から仕事があり、早退する生徒も少なくはない。
全員が揃う事はあまりないクラスの為に空いている席が結構ある。
ことりが空いている席を見ながらぼうっとしていると、廊下から騒がしい声が聞こえた。
「陽!郁!」
二人が顔を向ければ、南がいた。
隣には楓の姿もある。
「一緒に昼飯食べようぜ!」
断る理由もない為に二人は立ち上がり鞄を持って南の元に向かう。
「…陽、大丈夫?」
陽がことりだと知っている楓は小声で彼女に聞いた。
「うん…授業は簡単だし、大丈夫だよ。」
「なら、いいけど。」
いつも、四人は人気が少ない裏庭で昼食をとるらしくそこへ向かっていた。
しかし、四人が歩いているだけで視線が集まる。
キャー、と学校内でもあがる歓声に南だけ笑顔で手を振り答えていた。
「あ、俺購買行ってくるから先行ってて!」
「分かった。」
「あ、…俺も行く!」
今日急いでいた為に弁当を持ってくるのを忘れたことりは南についていく事にした。
郁と楓は先に裏庭に向かうらしい。
「あ。」
突然、南が口を開いた。
「郁と仲直りできたんだ?」
「うん、まあ。」
「よかったじゃん。」
「うん…」
なんとなく、ことりは南が苦手だった。