セブンデイズ・リミテッド(仮)


 ――ここから出られてはまずい。これ以上力を付ければ、知恵を付ける可能性がある。そうなってしまえば、私は私の枷(かせ)を外さなければならない。さすがにそれは、あまりいい選択とは言えない手段だ。

 何より、それには主の許しが必要となり、多少とはいえ、負担をかけることになってしまう。

 だから早く――そうなる前に、アレの処理を始めよう。


 /////


 その瞬間、何が起こったのか。

 理解したいのに、オレの頭は、なかなか追いついてくれない。気付いたら下にいて、起き上がり目にしたのは、





「――――気が付きましかた?」





 翡翠色をした、長い髪の少女だった。

 瞳は、まるで空のように澄んでいて。冷淡で無表情……でも、不思議と怖さは感じられない。そんな姿の少女が、オレの横に立っていた。よくよく見れば、服装がさっきの少女と同じ。でも、見た目があまりにも違いすぎる。


「お前……なんっ」

「今は、アレを消すのか優先です」


 少女が見つめる先には――あの、黒い生き物がいる。そいつはまだ屋根の上にいて、オレたちを見下ろしていた。

 表情なんてわからない。だが本能的に、とても恐ろしいモノだと感じた。


「まだ、新しいですね」


 ぽつり、そんな言葉を耳にした。


「最近、ここでなにかありました?」

「何かって―――!」


 朝の出来事が過ぎる。何かあるとしたら、あれ以外に考えられない。


「人が……飛び降りた」

「その人は、生きていますか?」

「……さぁ。そこまで知らない」

「落ちた場所は?」

「たぶん……今、いるあたり」


 それきり黙る少女。張り詰めた空気が漂い、なんとも言えない感覚に体を侵されていれば、


「――では、処理を開始します」


 そう告げ呼吸を整えると、少女はゆっくり歩き出した。
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