セブンデイズ・リミテッド(仮)


 するとソイツは、まだ車が走っているにも関わらず、こっちに渡ろうとしている。渡ろうとするのは、ソイツ以外にいない。信号を見ても赤色のまま。このまま行ったらアイツっ!


「――――危ないっ!」

「!? い、いきなりどうしたんだ?」


 反応を示したのは、隣にいる誠司。さっきまで気付きもしなかったのに、周りの人も今のは聞こえたようで、オレのことをおかしな目で見ていた。


「いきなり叫ぶからビックリしたよ」

「あ、あぁ、悪い。それより今、人が車に突っ込んでっ――?」


 目の前を見ると、そこにはさっきと変わらない光景。信号はまだ赤のままで、車が走り去って行くばかり。

 違うことと言えば、アイツの姿が見えないことぐらい。


「なんで……だって今、人が」

「夢でも見てたんじゃないの? 透の言うとおりなら、今頃すごいことになってるだろう?」

「だよ、なぁ。……悪い、変なこと言って」

「疲れてるんじゃないの? 今日は早く休んだ方が良さそうだね」

「あぁ……そうする」


 信号が青に変わり、みんなが一斉に渡り始める。





 ――――えっ?





 確かに今……見えた、よな?

 オレの横……通った、よな?





 振り返ると、そこにアイツの後ろ姿が。急いで駆け寄り肩に手をかけると。


「? あのう……何か?」

「!?―――いや、すみません。人違い、でした」


 違った。

 手を触れるまで、間違いなくアイツだったのに。

 こんな距離で見間違えるはずなんてこと……
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