セブンデイズ・リミテッド(仮)


 ドアの前まで来ると、意味もなく緊張感が走る。自分の家の前にいるだけなのに。手には汗が滲み、体には冷や汗が流れていた。

 意を決し、オレはノブに手をかける。大丈夫、何もありはしないと、自分に言い聞かせながら。



 ――――ガチャッ。



 そこには――本当に、何もありはしなかった。荷物はそのまま。帰宅した時となんら変わりない部屋。安心すると同時に、呆気にとられる自分がいた。


「――電話っ、しないと」


 一瞬、何をするか忘れてしまった。部屋へ上がり携帯電話を手にすると、119とボタンを押し、まずは救急車を呼ぶ。


「――――繋がらない?」


 ツー、ツーという機械音。かからないことがあるのか? と疑問に思いながら、オレはもう一度電話をかけた。


「――――くそっ!」


 同じだ。何度繰り返しても結果は一緒。


「どうなってんだよ!? あぁもう、どこでもいいから繋がってくれ!」


 手当たり次第、オレは電話をした。

 誠司に始まり、樋代、クラスの友達、担任にもかけた。だが……どれも繋がってはくれない。ならメールはどうだと、全員に一斉送信を試みる。


「――――なんでっ」


 電話と同じく、メールも届くことはなかった。電波が悪いと表示され、回線が繋がらず、アンテナを見れば確かに立ってはいない。

 力が抜け、オレはその場に座り込んだ。この状況がわかならくて、受け入れることもできなかった。

 繋がらない電話。

 神社で見た少女。

 考えているうちに、これは夢なんじゃないかと思い始めた。自分はまだ寝ていて、本当は今、布団の上にいるのではないか――。


「――――いっ!?」


 自分の頬をつねってみる。結構強めにしたが、それでここから抜けられるわけもなかった。とりあえずここは、現実なんだろうと思うことにした。





 ぞくっ……。





 体に、悪寒が走る。

 ここにいたら危ない。どうしてかなんて、そんなことは知らないが、本能的に、何かを感じたとしか言えない。

 外へ行こう、そう頭は導き出す。ここから離れよう。そうすれば、きっとこんなバカなこと、考えなくなるだろうから。
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