セブンデイズ・リミテッド(仮)


「…………ありがっ、と」

「大したことじゃありません。――それより」


 無表情のまま、少女はオレに質問してきた。


「どうして、ここにいるんですか?」


 質問の意味が解らなかった。聞かれても、オレ自身わけが解らない。

 しばらくの沈黙ののち、ようやく、オレは少女の姿をハッキリと見た。あの時は暗くて解らなかったが、髪は長く、薄い茶色。瞳は、濃い青色をして。その綺麗な容姿に、改めて目を奪われていた。


「――――なにか?」


 目が合った途端、慌てて視線を逸らしながらも、オレは少女に質問をした。


「君は……」

「何者か、でしょう?」


 首を縦に振れば、少女はため息をつき、


「――――きっと、見ていればわかります」


 静かに、そんな答えが返ってきた。

 どうして? と聞こうとした時、オレたちの前に、黒い霧のようなモノが現れた。それは耐えず形を変化させ、波打つような動きをしている。


「あなたには――あれが見えますか?」


 見えるも何も、ハッキリ黒いモノが見える。

 だいぶ呼吸が整ったオレは、力強く、肯定の言葉を口にした。


「あぁ。――黒い、霧のようなのが見える」

「やっぱり見えるんですね。そこから動かないで下さい。でないと――」


 今度は死ぬにます、と言い残し、少女は前進し始めた。

 物騒な発言だ。ここから動けば死ぬ? なら、それに向かう自分は平気だって言うのか?


「待てっ!――死ぬからって、君も危ないだろうが!?」


 少女は答えない。まるで、その声は届いていないかのように。何度も叫んでいれば、一度だけ、少女はオレの方を振り返る。

 感情など感じられない表情。

 鋭く尖った刃物のような眼差し。

 これ以上近づくな、そう警告されているように思えた。
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