セブンデイズ・リミテッド(仮)
情けない……あの目を見た瞬間、体はすっかり怯えきってた。頭のてっぺんから足の指先まで、ぴくりとも動かせない。
それは――突然始まった。
テレビや映画なんかである、化け物との戦い。目の前で起きているのは、それと似ている。似ているが、これには決定的な違いがある。これは今、目の前で現実に起きているということ。
少女は武器を持たず、素手でやり合っている。何かの体術だろうか。素人目から見ても、それはとても切れのある攻撃に思えた。当たれば相当な威力だろう。
だがそれは、定まった形を持たない相手にとっては、なんの意味も無かった。蹴りや拳を受けても、体は見た目どおりやわらかく、衝撃を与えることができないでいた。
「…………」
一旦、少女は後ろへと下がる。何かを探しているのか。辺りを見回し探し、目の前にいる敵とは違うものを見ようとしているように思えた。
「なにしてんだよ……敵わないなら逃げろ!」
それでも少女は、何かを探していた。
目の前に迫る存在のことなど、気にも留めていないかのように。
――――リン。
まただ。鈴の音が辺りに響き渡る。それは少女にも聞こえたらしい。どうやら、オレだけが聞こえる幻聴ではないらしい。
「見てないで、ここに来なさい」
ある一点を見据えながら、少女は言い放った。
「ふ~ん。ムダに体力使ってたわけじゃないんだぁ?」
無邪気な声。姿を見せたのは――。
「っ!? アイツっ」
それはさっき、街で見かけた人物。フードを被り、体には布を巻きつけている……間違いない。
「弱ったところをやってあげようと思ったんだけどなぁ~」
頭に被っていたフードを脱ぎながら、その者は言った。
姿を見て、オレは驚いた。まだ歳が十いったかいかないかぐらいの姿。短い髪に、大きい目が可愛い女の子だった。