セブンデイズ・リミテッド(仮)
◇1
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神社中央に着くと、少女は道になっていない獣道を進み始めた。黙ってるのもなんだから、あの時、大木の中にいたのは君だよな? なんてことを聞いたりしてるんだが、
「空気がよかったので、精霊に許可を得て休ませてもらいました。主も急ぐのであれば、この辺りの精霊に頼むといいですよ」
この口調や、オレのことを主って呼ばれるのはちょっと……。
「頼むから、普通にしゃべってくれないか?」
「? 普通、と言われても」
「友だちに話す時はもっと楽だろう? オレにもそういう感じで話してほしいんだ。だから主って呼び方もやめてくれ。そんなガラじゃないし」
途端、少女は足を止めた。どうしたんだと思えば、少女は困ったような顔をしていた。
「オレ、変なことでも言った?」
「……初めて、そのようなことを言われたので」
「普通に話してくれっていうのが?」
「はい……。たった一週間。神様の力を維持する為だけに存在する私たちに、そういった命令を受けたことがないので」
「そんな大げさにとらえるなって。なんて言うか――ちょっとしたお願いっていうか、軽いものだって」
「…………」
「それとも、命令だって言われた方がいいのか?」
頷く少女。どうやらその方が、少女的には楽なようだ。
「じゃあできるだけ、ってことで。話すのが苦手なら、無理して合わせようなんて思うなよ?」
「いえ、話すのは嫌いではありません。ただ、あまりにも久々なので、少し戸惑ってしまうだけです」
そう言えば教会で言ってたな。人間と話すのは久々だって――あっ。
「悪い、まだ名前言ってなかったよな?」
色々ありすぎて忘れてた。自分のもだが、コイツにもまだ聞いてなかったっけ。
「オレは神垣透。【透】って呼び捨ての方が気楽かな」
手を差し出せば、少女はオレと手を交互に見る。そしておそるおそる、オレの手に触れた。
「では、これからはそのように呼ぶことにします」
握手を交わすと、少女は手を放すなり歩きを再開させた。
この流れなら、自分のことも言うと思ったけど――知られたくないのか?
「君は教えてくれないのか?」
「? 私は何を教えれば――」
「名前だよ、名前。なんて言うんだ?」
「ありません。私たちには不要なので」
「不要って、本当に君は――?」
続きを言おうとしたら、少女は足を止めた。どうやらここが目的の場所らしい。
前に見えるのは、お世辞にもきれいとは言えない小さな社(やしろ)。この中に神様がいるって話だが、一体どんなヤツが出てくるやら。