セブンデイズ・リミテッド(仮)
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小僧が部屋からいなくなる。どうやら風呂に行ったらしく、ワシは完全に風呂場に入る気配を感じてから起き上がった。
「――対価は何を差し出した」
想定していたのか、女の表情は変わらない。
「まずは、【熱い】という感覚を。短時間でしたので、感情を使うことはありませんでした」
「お主は毎回、そのようなことをしておるのか?」
「いえ、今回のようなことは稀です。昨夜、透やこの街一帯に記憶操作を施したので、あまり力が残っていなく……」
つまり、この者は万全の状態ではない。となれば今後、女はその時に適した感覚や感情を支払うことになるというわけか。
「じゃが、ワシにはそれ以外も欠落している部分があると視えるぞ?」
「現世で存在するには問題ありません。私はあと五日、仕事ができればそれでいいのですから」
やれやれ。そんな言葉を聞いてしまえば、小僧は泣いてしまうんじゃないか?
とはいえ、これでワシの見立ては合っていると証明されたも同然。
「やはり、聞いていたとおり面白いやつじゃな」
「私のことを、どこからか聞いたとおっしゃるのですか?」
「そういうことになるのう」
女の隣に行くと、女はコタツから出てワシに正座で向かい合った。
「ワシはな、ただ見たいだけじゃ。現世に在るモノが優勢なのかどうか――な」
目を細めれば、女は首を傾げた。
まあ、こやつにはわからぬことじゃからな。どんな風に転がるか、このまま見ているとしよう。
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翌朝、猫は姿を消していた。ちょっと散歩に行ってるらしく、しばらくオレの家を寝床に使うからと、少女に言付けていた。ずっとじゃないだろうから寝床にされるのはかまわないが……大家さんに見つからないよう注意してくれるんだろうか。お気楽な性格っぽいし、アイツのせいで追い出されるなんてことはごめんだ。
「君、好き嫌いはある? なければあるので作るけど」
台所から声をかければ、少女は首を傾げた。