セブンデイズ・リミテッド(仮)
「何を作るのですか?」
「朝飯。かんたんでいいなら目玉焼きとか、スクランブルエッグとかできるぞ」
「私に食事は不要です。天使様から力を供給されていますから、お腹が空くということはありませんので」
「そうは言ってもなぁ……」
ひとりだけで食べるっていうのも、なんかつまらないし。
「不要って言っても、食べられないわけじゃないんだろう?」
「おそらく――飲み物は頂けるので、大丈夫かと」
聞けば、食べ物は長いこと口にしていないらしい。最後に口にした記憶は、水か紅茶のようなものだって言うんだから驚きだ。
「じゃあいきなりだと体に悪いかもしれないか。――甘いのとお茶系、どっちが好き?」
「あのう、本当に気を使う必要は」
「んなこと気にするなって。オレは別に君より偉いわけじゃないし、君を下に扱うつもりもない。同等に扱うから、そのつもりで」
卵を二つ使い、スクランブルエッグを作る。これにご飯と海苔をつけ、飲み物にはお茶。少女には市販のトマトスープを溶いて出した。
「熱いから気を付けて」
「……すみません」
「謝ることないって。ほら、食べよう」
「ワシの分はどこじゃ~?」
箸を持った途端、どこから入ったんだか、猫がタイミングよく戻って来た。
「ワシも食いたいぞ。甘い物はないのか?」
「……貰い物のお菓子でよければ」
気付かれないよう小さくため息をつきながら、台所に置いてある箱を持って来た。
中身は大福。いくら神様とはいえ、猫の姿じゃ食べ辛いと思うが。
「これですけど、食べられるんですか?」
開けるなり猫は、おぉー!!! っと歓喜の声を上げた。
「好物じゃ! 半分くれ」
半分って、ひとりで三つも食べる気かよ。まぁ、そこまで甘いのが好きってわけじゃないからいいけど。
「あげますから落ち着いて下さい。ってか、どうやって食べるんですか?」
「手で食べるに決まっておろうが」
満面の笑みで答えられ、オレはもう堪らず笑い出していた。
「手っ、手を使ってって。猫の姿なのにっ――くくっ」
「バカにするでない! 猫の姿とはいえ、箸だって綺麗に握れるぞ!?」
すると、猫は本当に器用に箸を握って見せた。できるとは思ってなかっただけに、思わず感心してしまった。