セブンデイズ・リミテッド(仮)
「どうじゃ! これでもまだムリだと思うか!?」
「わ、わかりましたから、そう熱くならないで下さいよ。――お詫びに大福、四つあげますから」
差し出すと、猫は目を輝かせながらその場でくるりと一回転した。
大福で機嫌が直るなら安いもんだ。後から手懐け用に買ってこよう。
「問題なく頂けました」
少女を見れば、スープを飲み終えていた。
「よかった。スープの後で合わないかもだけど、君もどう?」
「透の分は――」
「オレはもう食べたから」
箱ごと目の前に置けば、少女は戸惑いながらも大福を手にしてくれた。でもなかなか食べようとしないから、オレは大福の説明をした。
「中身は甘いあんこってのが入ってる。まわりの白いのは、餅って言って伸びるようになってる」
頷くと、少女はおそるおそる大福を口にした。次は今よりも大きい一口。どうやら食べられないってことはなさそうだ。
「透~他にはないのか?」
いつのまにか大福を食べ終えた猫が、更なる食べ物を要求してきた。昨日からそうだが、コイツには今まで聞いたことのある神様のイメージってのがまったく感じられない。いや、ある意味これもありか。日本には八百万の神様がいるって言うんだし、こんなのがひとりぐらいいても不思議じゃないか。――あ、ひとりでなく一匹か。
「残念ながらありません」
皿を持ち台所で洗っていれば、猫は足元にまとわりつきおねだりをしてきた。
「買い物をするなら、必ず大福を忘れるでないぞ」
「わかりましたって。――あ。お願いですから、家に入る時は大家さんに見つからないで下さいよ? 大家さん猫嫌いなんですから」
「何を言うか。あやつは嫌いなのではない。【懐かれると辛い】から避けるんじゃよ」
「懐かれると辛い?」
洗い終わり猫と向き合えば、目を閉じながら猫は続ける。
「あそこまで極端に嫌われると、何かあったと感づくわ。おおかた、可愛がっておった猫の死に目にでも会ったんじゃろう」
「そうか、だから遠ざけるようなこと。――ん?」
あれ、今の話だと既に大家さんと会ってるってことになるんじゃあ――。
「遠ざける為とはいえ、水をかけるのはやめてほしいもんじゃ」
やっぱりかぁー! あぁ~…オレの部屋に来てるなんてバレたらどうすりゃいいんだよ。