【短編】好き。

だって、10年間も言わなかったんだよ。
もとい、言えなかったんだよ。


ずっと胸に秘めて

育んで来たこの想いを。


今。ここで。

言うの?



「あたし……」


「ん」


「翔平が……」


「ん」


「………スキ」



――その瞬間。あたしはずっと求めていた温もりに包まれていた。


鼻いっぱいに広がる翔平の香り。

後頭部と腰に回された翔平の大きな手。


――…愛しい。



「ずっと10年間。綾と出会った日からずっとそれが聞きたかった……」



え?



「綾に一目惚れだったんだ……」


「ほ、本当に?」


「嘘つくかよ」



顔を上げて翔平を見るとかっこよく笑っていて。あたしのハートが黄色い声を上げた。きゅーん、とね。
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