記憶の中で…
「それでその男の子の名前は、一ノ瀬夏樹だと両親は言ったんですね?」
「それが…名前までははっきりと覚えてないの。」
「そうですか。そこまで分かれば充分です。ありがとうございました。」
「ああ、最後に一つだけ…。その男の子が退院した後、何回か診察に来るように言ったんだけど、一回しか来なくてね。何ともなかったんだろうか。」
「たぶん、大丈夫だったんだと思いますよ。記憶をなくした事以外は。」
「そうか。それじゃ、君も頭を打ってるんだ。気を付けるんだよ。」
「はい。」
「ねえ、ナツキ。ナツキのお父さん、お母さんは子どもの意識がないのに、どうして救急車を呼ばなかったんだろう。それに何で階段から落ちたなんて…。」