記憶の中で…


月曜日の放課後、ユキと入院していた病院に向かった。

ユキが大欠伸をする俺に、「眠そうだね。」と言った。

「ん…。ここんとこ寝れなくてさ…。」

と言いながらまた欠伸をした。

「森ちゃん、起こしても起きないって呆れてたよ。」

「はは、眠気には勝てねーって。許せ、森ちゃん。」




病院に着くとすでに先生は待っててくれて、すぐに応接室へ通してくれた。


この間は談話室で、誰でも出入り自由な感じだったのに、今日は応接室?そんなに大切な話なんだろうか。


俺たちに座るよう促し、先生も向かいに座った。

「10年前の子どもの件は分かったのかい?」

「はい。県境に近い大学病院で、入院していたのを覚えててくれた看護師さんがいて。」

「へー、凄いね。そうか。よかったな。

実はね、こっちの話はそれとは違うんだけどね。

10年前に病気で入院していた子どもが亡くなったんだ。生まれた時から心臓が悪くて、入退院を繰り返しててね。

ある日、ちょっとした風邪が元で肺炎を起こしてしまってそのまま…。

で、君の両親の名前は確か一ノ瀬泰造さんと志保さんだったよね。その亡くなった子どもの両親の名前と同じなんだ。」



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