記憶の中で…
「え?」
「どちらか一方が同じなら有り得なくもないけど、両親揃ってだからね。その時の子どもの年齢も五歳で君と一緒だ。最初は双子かと思った。でも、子どもの名前まで同じだったんだ。」
「それ…て。」
「そう。一ノ瀬夏樹だ。」
もう何が何だか分からなかった。理解の範疇(はんちゅう)を越えてる。
俺が二人?
同じ名前の両親と、同じ名前の子ども?
いや、俺は一ノ瀬じゃない。高島だ。
…一ノ瀬夏樹と高島夏樹が入れ替わった?
いや、違う。入れ替わったんじゃない。一ノ瀬夏樹は死んだんだ。
じゃあ、俺は…身代わり…か?
心臓の音が早鐘のように打ち鳴らし、まるで身体中の血液が逆流するようだった。