記憶の中で…


予鈴が鳴っていつの間に戻ってたのか、後ろから声が聞こえた。

「ほら。やっぱり可愛いじゃん。」

そう言いながら指先に私の髪を絡ませて、くるくる回して遊んでる。

「あのねえ、おもちゃじゃないの。止めてくれる?」

振り向くと、すっごい優しい瞳で見つめられた。


やっぱり夏樹と似てる。夏樹も優しい目をして笑ってた。

その笑顔にドキッとして、そして悲しくなった。

やだ…涙が出て来ちゃった。

「ゴミが入っちゃった。」

涙を誤魔化すためにハンカチを出そうとして、ポケットからパスケースが落ちた。

それを拾ってくれた彼に「ありがと。」と手を差し出した。

けれど、二つ折りの開いたパスケースに入れていた写真をじっと見て返してくれない。




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