記憶の中で…
「ユキ。俺に勇気ちょうだい。」
「勇気?」
「うん。何でこんな事になったのか確かめる勇気。俺が…逃げ出さないように。勇気…ちょうだい。」
ユキの上に覆い被さってキスをした。ユキもそれに応えようと必死に俺にしがみついた。
もう日は沈んで辺りは真っ暗。中庭には誰もいない。外灯が誰もいない芝生を照らす。
「ユ…キ…。」
「…ん…。」
駄目だ。歯止めが効かない。ユキ、俺を止めてくれよ。俺を止めるのはお前の役目だろ?
その時、救急車の音が聞こえて、我に返った。
「…ごめん。」
ユキを起こして、もう一度軽くキスをすると病院を出た。
家まで送り、別れ際、思いっきり抱き締めて耳元で告げた。
「今夜、もう一度父さんに確かめる。答えてくれるまで諦めないから。ちゃんと冷静でいられるように祈ってて。」
「うん。私はナツキの味方だよ。」
ユキの言葉を胸に自宅へ足を向けた。