記憶の中で…
「返してよ。」
「これ…誰?」
「いいじゃない、誰でも。」
「教えろよ。誰だよこいつ。」
彼の目付きが鋭くなって、私をじっと見据えた。
「お…幼なじみだよ。返して!」
彼の手からパスケースを引ったくった。
「そいつ…今どうしてんの?」
「何で…何であんたなんかにそんな事言わなきゃいけないの。」
辛い思い出が蘇る。
やだ…泣くなユキ。こんな奴の前で泣きたくない。
自分に言い聞かせても、気持ちとは裏腹に目に涙が溜まる。
涙が溢れるか溢れないかという時に、いきなりバサッと何かが頭から掛けられた。
これ…体操服?
綺麗に洗濯されたいい匂いがする。
「…泣くなよ。も、聞かねえから。ごめん。」