記憶の中で…
第三章
ユキのお母さん
眠れない。
ナツキは真実を確かめる勇気が欲しいと言った。
ちゃんと話ができたんだろうか。熱くならずにいられたのだろうか…。
時計の音がやたら耳につく。
12時か…。
窓を開けて空を見上げた。
今日は星がよく見える。
寒っ。
空気も冷たくて、少しだけ吐く息が白い。
門扉の近くで黒い影が動くのが見えた。
猫?ううん。もう少し大きかったかも。
…もしかして、ナツキ?
部屋の窓から呼んでみた。その影はゴソゴソと動いて立ち上がり、こちらを見上げた。
少し離れた街灯の薄暗い明かりではよく見えなかったが、背格好がナツキだった。
ヒソヒソ声で、「ちょっと待って。」と言い、玄関の鍵を開けた。