記憶の中で…
「あなたも辛かったでしょう。きっと泣きたくても泣く場所もなかったのよね?
ご両親を恨んでは駄目よ。10年もの間に怪我もしたでしょう。病気にもなった筈よ。それを面倒見てくれたのは今のご両親よ。あなたを愛してなければできないわ。
あなたのためにも、お母さんのためにも、あなたの口から全てを知った事をお母さんに打ち明けて、許してあげる事はできない?
気持ちの整理をつけるには時間がかかるでしょうけど、ドイツへ発つ日が近いのよね?自分でよく考えて。
私はこれからあなたの実のご両親に連絡をするわ。ここからは大人の出番。あなたに悪いようにはしないから任せてくれる?」
「…はい。よろしくお願いします。」
ナツキはお母さんに頭を下げた。
「何言ってるの。こーんな小さい時から知ってるのに、今更って感じよ。本当の息子みたいに思ってるんだから気にしないの。」