記憶の中で…

最後に…



《ナツキside》

三ヶ月後――

母さんの退院を待って、父さんたちはドイツへと発った。

あれから母さんはみるみる回復していって、医者もびっくりしてた。まだ薬は手放せないから、向こうでも医者を見つけて治療していくと言っていた。

空港へ見送りに行った時、戸籍の事を聞いた。

「一ノ瀬夏樹は行方不明になったまま見つからなくて、10年経ってしまった。日本にはもう帰って来ないから戸籍から抹消したよ。」

そりゃそうだ。今更死亡届なんて出せる訳がない。

でも抹消してしまうと、生きていた証まで消えてしまいそうだから、以前俺が取ってきた戸籍抄本を譲ってくれないか、後で送ってくれ、と頼まれた。

これからは、息子の位牌も写真もちゃんと飾って、供養していくと話してくれた。




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