記憶の中で…
ずっと心の奥に仕舞い込んできた事。家族にも他の誰にも言わなかった…ううん、言えなかった事。
彼は一言、「わかった。」と言ってくれた。
「じゃあ、家に来て。」
家の前まで来て、ナツキは躊躇った。
「俺…本当にいいの?そんなに親しくないのにあがっても。」
「ん?大丈夫だよ。クラスメートだって言うし、お母さんも妹もいると思うし。」
「そう。」
「ただいま。お母さん、友だち連れて来た。二階に上がるから。」
リビングから顔を出したお母さんが「お帰り。」と返事をして、ナツキに「いらっしゃい。」と言った。
「俺…女の子の部屋なんて初めてだ。何か…照れ臭いな。」
鼻の頭をぽりぽりと掻いた。
「そ…そう?私も男の子を入れるなんて初めてだよ。」
何だか気まずい空気。
「ち…ちょっと待ってて。お茶取って来る。」
そそくさと下へ降りて行った。