記憶の中で…


「もう一回、挨拶してもいい?」

そう言ったナツキの顔が、私の顔を覗き込むように近付いてきた。

ゆっくりと、そっと唇に触れた。

「これって何の挨拶?ご苦労さんの挨拶?ドイツではこれが普通なの?」

真面目に聞いてるのに、いきなり吹き出して、大笑いするナツキ。

「アハハハ…ユキって面白いな。そんな事真顔で言うなよ。クックッ…。」

何の事だかさっぱりわからん。

「あのな…。お前、ドイツがどうのこうのよく言うけど、そんな特別な事何もないよ。

抱き合ったりしてもちょっと肩を寄せて、背中をポンポンする程度だし…。

握手はしっかり手を握るけどな。

キスも家族だったらするけど、誰とでもする訳じゃない。」

「え?そうなの。なーんだ。」

「で?今のキスは何のキスかわかった?」

「はい?」




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