記憶の中で…


彼の席は私のすぐ後ろになった。

席に座る時私と目が合い、あ…という顔をしてにっこり微笑むと、「よろしく。」と右手が伸びて来た。

思わず右手を差し出して、握手を交わした。

同い年の男の子の手なんか触るのは初めてで、大きなガッシリとした手で握られると、心臓の音がドクンとなった。



彼は真面目に授業を受けるのかと思いきや、私にちょっかいばかりかけてくる。

背中をツンツン突つくので、「何よ?」と声を潜めて聞くと、「あれ、何してんの?」と隣の校舎の屋上を指差した。

見るといわゆるサボリの男女がいて、抱き合って…キ…キスー!?

思わず立ち上がってしまった。

「何ですか、桂木さん。あら、顔が赤いわね。熱でもあるの?」

「え…いや…あの…何でもありません。」

席に座ると後ろの席で声を殺して、肩を震わせて笑ってるし。




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