記憶の中で…
逃げ回ってもそんなに広くない部屋の中。すぐに捕まった。仰向けに倒されて、私の上にナツキが跨がった。
「うっ…重…重いよナツキ。」
「ふん。この位我慢しろ。さあて、どんな顔にしてやろうか?」
体の上に乗っかって、両手を足で押さえられ、身動きがとれない。
「先ずは頬っぺたに…。」
ペンを持つ手が近づいてきて、やられる!とギュッと目を瞑った。
あれ…?
触れたのはペンではなくて、ナツキの唇だった。
「ナ…ツキ?」
「仕返ししてやる。」
「やだ。」
「俺はやられっぱなしは嫌いだ。」
「あの…じゃあ、せめて顔洗ってきて?それ水性だから。」
「逃げるなよ。」
まるで捨て台詞でも言うように部屋を出た。