記憶の中で…
「屋上。…どうやって行くの?案内してよ。」
溜め息を一つ吐くと、仕方なく案内する事にした。
「そういえば、まだ校内の案内してないよね?ついでに今しようか?」
「そう?んじゃ頼むわ。」
「私たち一年は三階だけど、二年は四階、三年は二階。まず三階は音楽室。こっちが第一で向こうが第二。二階は…。」
とりあえず校舎の中はざっと案内し、最後に屋上へ向かった。
重い鉄の扉を開けると、眼下には街が広がっているのが一望できる。
「うわー、結構眺め良いんだ。へー、初めて見た。」
「何だ。今まで来た事ねえの?」
「うん。」
「外に出て正解だったろ。」
彼の切れ長の目が私を捉える。
悪戯っぽくニッと笑った顔が、幼い日の夏樹を思い出させる。
夏樹…。