記憶の中で…
ドン!
うわ…。落ちる!
咄嗟にナツキが腕を引っ張ってくれて、危うく落ちるのは免れた。
でもその拍子にナツキがバランスを崩して、階段から滑り落ちた。
「ナツキ!!」
何とか途中で止まったものの、脳震盪(のうしんとう)を起こしたみたいで動かなかった。
「ナツキ!ナツキ!!」
揺さぶろうとして、近くにいたサラリーマン風の人が、
「動かしちゃいけない!」
と言って救急車を呼んだりして、色々助けてくれた。
静かな廊下で一人、椅子に腰かけていた。不安で、どうか無事でありますように…、と祈るしかなかった。
待っている時間は随分長かった。
診察室から話し声と足音が聞こえる。
先生が出てきた。
「君はご家族の人?」
「いえ、違います。」
「彼のお家の人に連絡をつける事は?」
「いいえ。」