記憶の中で…
「そうか。じゃあ、分かる範囲でいいから答えてもらえるかな?」
先生はボードに挟んだ紙に何やら書き出した。
「彼の名前と生年月日は?」
「一ノ瀬夏樹です。生年月日は1996年の12月で日にちはわかりません。」
「住所は?」
「〇〇市…。」
「学校名は?」
「県立…。」
「わかった。どうもありがとう。彼ね、頭を打ってるから何日か入院してもらうよ。怪我は大した事ないから念のためにね。」
「そうですか。ありがとうございました。」
深々と頭を下げると先生は看護師さんにボードを渡し、どこかへ行った。
看護師さんが言った。
「びっくりしたでしょう。もう大丈夫だからね。意識もあるし、話もできるわ。ただ記憶が混乱してるみたいだから、お喋りは少しにしてね。」
記憶が…混乱?
どういう事だろう。