記憶の中で…
コンコン…
ノックの音が聞こえたような気がしてハッとした。
私…寝ちゃってたんだ。
コンコン…
「はい。」
今度ははっきりと聞こえた。入って来たのはナツキのお父さんだった。
「ユキさん、ナツキが迷惑かけたね。ありがとう。様子はどうだい?今、看護師さんに聞いたんだけど、記憶が混乱してるって?」
「でも今はおかしなところは何も…。」
「そうか。君も疲れたろ。一度家に帰った方が…。」
「いえ、大丈夫です。昼に一度帰ってますから。それに…。」
ナツキに握られた手を見せた。
「離してくれないんです。」
「ハハハ…そうか。えらく気に入られたね。」
「はい。」
ナツキのお父さんと顔を見合わせて笑った。