記憶の中で…


「そう…ですか。小さい頃のナツキって、どんな男の子だったんですか?」

「うーん、そうだな。大人しくてあまり喋る子じゃなかった。そういえば日本に来てからかな、明るくなったのは。君と出会ったからかもしれないね。」

優しい目をして微笑んだ顔は、ナツキとは全然似ていない。

夏休みに初めてナツキと出会った時、お母さんの顔をチラッとしか見なかったけど、お母さんにも似ていなかった。

「ナツキはおじさんとあまり似てないんですね。息子だったら声が似てるとか、爪の形が似てるとかあると思うんですけど。」

「何が言いたいんだね?」

急に声色が変わって、鋭い目つきになった。

「ご…ごめんなさい。何も深い意味はありません。お気を悪くされたのなら…本当にごめんなさい。」

深く頭を下げる私に一言、「いや。」と言って沈黙が流れた。

「君はもう帰りなさい。後は私が見よう。手は離してくれそうかい?」

手を離そうとすると、ぐっと力が入る。




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