記憶の中で…
「ごめんな、ユキ。おばさんにまで迷惑かけちゃって。そういや、おじさんは?」
「今年の四月から単身赴任してるの。」
「そっか。」
「で、話って何?」
「家に帰ってから病院に聞いたんだ。10年も前のカルテなんて保管してあるのかって。」
「うん。」
「そしたら、かかり続けていれば保管されてるけど、来なくなってある程度年数が経てば、処分してるから分からない、て言われた。」
「そうなんだ。」
ナツキは悔しそうに唇を噛んで、「クソッ!」と言って拳で膝を叩いた。
「ねえ。そこの先生は覚えてないのかな。」
「?」
「カルテがなくても、先生が覚えてるかもしれないよ。記憶をなくした子どもなんて、そういないでしょ?」
「あ…そうか。先生でなくても看護師さんが覚えてるかも…。」
「うん!他の病院とかもあるし、まだ方法はあるよ。」