天神学園高等部の奇怪な面々Ⅲ
そんなこんなで、六人は夜が来るのを待つ。

小夜の祖父の家の縁側で談笑したり、夕飯に素麺をご馳走になったり。

…夕暮れになると、ひぐらしが鳴き始めた。

日中の狂乱のような暑さはナリを潜め、次第に気温が下がり始める。

この辺りが田舎のせいだろうか。

天神学園のある都会とは、同じ夏でも随分と感じが違っていた。

「ここらは季節が分かりやすい感じだな」

陽が縁側に座ったまま呟く。

「そうだねぇ…夏ってただ暑いだけだと思っていたけど、こういう場所に来るとそれだけじゃないってわかるね」

いつも元気なきょうこも、どこかしんみりとしている。

油蝉の大合唱も、地面を忙しそうに行き交う蟻の群れも、青空を真っ二つにするような飛行機雲も、遠くから聞こえてくるさざ波の音も。

自然に囲まれたこんな場所だからこそ、夏という季節を演出してくれているのだと理解できるのかもしれない。

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