LOVE☆PIECE
目覚めていく何か
それから桜の舞い散る季節は過ぎ去り、辺りの木々が桃色から活気のある若草色になろうとしている。
会長から『守ってやるから』と言われたあの日から、特に何も起こっていない。
いや、起こってほしいわけじゃないけど少し、寂しい気もした。
とある日、菅先生があることを企画した。 それは近くにある、少し規模が大きい公園に、ハイキングに行くこと。
嬉しそうな雄叫びをあげる人やら、冷ややかな目で、この歳でそれかよという厳しい意見も出没。
私の前にいる会長は、一体どんな反応をしているんだろう? そう思い、体や頭を無理に揺らす。
「何してるの?篠原さん。」
私の不自然な動作に気が付いたらしい。
「ちょっと黒板に書いてある文字が見えなくて…」
「何も書いてないけどね。」
この鋭い発言をしてくれる子は、お隣りさんの富永 渚という眼鏡をかけた可愛らしい子。
私にとってはちょっとお気に入りだ。
なんというか基本控えめなのだが、積極的になる部分がある。
そのギャップにメロメロになった男も多い、と琴ちゃんは言っていた。
「篠原さんって面白いわね。」
「あ、ありがとう…ございます。」
いきなり褒められてしまったので(多分)反応に戸惑ってしまった。
面白いと言われてありがとう、なんて返事おかしいよね…
「がんばってね?」
「ありがとうご…って、何をですか?」
「…早く前向かないと、先生が悲しんじゃうわよ。」
と言われて咄嗟に前を向いた私に、菅先生は哀愁の混ざった目付きで睨んでいた。
その顔がまた笑えて来るんですよね…。
「…いいですか。」
「あ、。すみません。」
軽く棒読み。
「皆さんも、ちゃんと聞いてますか?先生の話に、心で聞いてください。」
やっぱり笑えてきた!
その言い方やめてよ…。
みんなも笑ってる。
「何笑っとんのや。」
富永さんでもくすくす笑っている。
ってか、見事に富永さんにはぐらかされた様な気がしてきた。
何をかって?
さっきのこと。何についてがんばれと言ったのか、聞こうとしたのに。
うまい感じに聞けなくなってしまい、どうすることも出来なかったのだが、
自分としても、ただの一言の深追いは気が引けた。