御曹司の溺愛エスコート
それは猫のクリスタルだった。
手のひらにちょこっと乗る猫。
窓から入る光が猫にあたり、キラキラ光っている。


残ってた……。
良かった……。


桜はそれを胸に当てた。


「桜? どうした?」

「蒼真兄さま……あったの……ネコちゃん……」


猫のクリスタルは思い出深いものだった。
拾ってきた猫をどうしても飼えないと知って泣きじゃくった12歳の桜。
その猫は優しい南条夫妻に飼ってもらえたのだが、桜はしばらく落ち込んでいた。


蒼真はそんな桜のためにそのクリスタルの猫を買って来たのだ。
桜の宝物となる第一号の置き物だった。

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