御曹司の溺愛エスコート
倒れちゃダメ……。


桜は意識を保とうと喘ぐように呼吸を繰り返す。
3年前のあの事件から桜は火を見ただけで意識を保つのが難しい。


桜が落としてしまったグラスはすぐさまメイドが片付けている。


「ケガは?」


蒼真が近づいて来て聞かれる。


「南条、桜さんはご気分が悪いようね? 部屋に案内して差し上げて」


蒼真の言葉をさえぎるように、秋月夫人は苛立った様な口調でドアの前に控えていた南条に言っている。


「かしこまりました。桜様、こちらへ」


南条に促されて、震えが止まらない桜だが足を踏みだす。


応接室を出て、背後で扉の閉まる音がして肩の力が抜ける。


ここの人たちに弱みは見せたくない。


その時、南条の腕がそっと桜の腕に添えられた。


「顔色がよくありませんね。大丈夫でございますか?」

「……はい。大丈夫です」


優しい南条に心配をかけないよう笑みを浮かべようとするが、弱々しい微笑になってしまう。


南条は更に心配そうに桜を見る。


南条に身体を支えられているおかげで、桜は気を失わずに部屋に行くことが出来た。



ベッドの端に座らされてホッと一息つく。


「お疲れのようでございますね」

「久々の日本で緊張しちゃったみたい」





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