御曹司の溺愛エスコート
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桜が気に入っている湖を見渡せるレストランではなく、もう少し格式高いホテルのフレンチレストランに予約を取っていた。


「ここのフレンチが美味しいと評判らしい」


3年前までは贅沢な暮らしをさせてもらっていた桜だが、こちらに来てからはそんな暮らしとは無縁の生活を送っていた。
そのせいで、席に着いた桜は居心地が悪い。
オーダーも蒼真に任せる。


魚介のマリネから始まり、次々と出される料理。
それらを食べる桜の口数は少なかった。


桜は蒼真と肌を重ねてしまい後悔していた。
どんどん離れられなくなっていく自分が怖い。
幸せになってはいけないのに……。
望くんに申し訳ない……。

ごめんね……少しだけだから……。
もう少しだけ蒼真兄さまの側にいさせて……。


「桜、もういらないのか?」

「はい。ご馳走様でした」


食べたいのだが、小さくなった胃はたくさんの食べ物を受け付けない。


そんな桜を蒼真は目を細めて見た。


日本に帰ったら検査を受けさせよう。
食事の量があきらかに少ない。
顔色も悪いのでしっかりと検査を受けさせなければ。



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