御曹司の溺愛エスコート

3年前

******


コトッ……。


物音で桜は目を覚ました。
覚醒していないせいか自分が何処にいるのか分からない。


「もうすぐ夕食だが?」


真っ暗な部屋から蒼真の声がした。


「あ……」


日本に来た事を思い出した。


部屋の中に明かりが点き、急な明かりの眩しさで桜は目を瞬かせる。


「どうしてここに……?」

「一応医者なんでね。具合の悪いものがいたら見ずにはいられないだろ」

「具合は悪くないです……」


桜は緩慢な動作で上半身を起こし、ベッドに腰をかける。


「あっ!」


蒼真の手が桜の手首を掴んだ。
腕時計を見ながら桜の脈拍を確かめている。


「それでは下で夕食をとれるな」

「蒼真兄さま……聞いて欲しいの。あの時の事……」

「やめてくれ、忘れたいんだ」


3年前、蒼真の弟、望は別荘の厩舎で死んだ。
燃え盛る炎の中で。


「でもっ!」


その時、一緒にいたのは桜だった。



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