御曹司の溺愛エスコート

買い物

******


10時ぴったりに真琴が入って来た。


桜はシャワーを浴びてオリーブ色のスカートと身体の線が見えないダボッとした山吹色のニットを着ていた。
手に茶色のコートを持っている。


それらは蒼真が買い与えたものではない。


その装いが桜の無言の抵抗のように思える。


蒼真は何も言わずに桜の手にしていたコートを取って着せた。
そんなさりげない優しさに桜の心は温かくなる。


蒼真から買い与えられた服は着たくなかった。
だが、その行動がひどく子供っぽく感じて桜は後悔した。


「用意はいいか?」


蒼真の長い指が桜の指にからまる。


「はい」


しっかり組み合わされた手を桜は見た。
長い指が自分の指を包み込むように握られている。


桜は蒼真の手が好きだった。


< 140 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop