御曹司の溺愛エスコート
「私も帰ってきたくなかった」


大好きな人の婚約を祝いにくるなんてバカだった……。これ以上顔を合わせられない。


桜は蒼真の横をすり抜けて、バスルームに入り鍵をかけた。


涙にかすむ目で鏡に映る自分を見る。


ボロボロだ……。蒼真兄さまの言うとおり、帰ってこなければ良かった……。日本に戻って、余計につらくなった。アメリカで生活するだけの精一杯の自分。楽しい友人には恵まれたけど、心の隙間を埋めてくれる友人はいない。私は蒼真兄さまとかけ離れすぎている。ここに居たくない……幸せなふたりを見たくない……。


……明日帰ろう。


幸いなことに、チケットは席が空いていたらいつでも帰れるオープンだ。


顔を冷たい水でバシャバシャと洗い、バスルームから出た。



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