御曹司の溺愛エスコート
「お前が来ると先が進まない」


蒼真に冷たく言われ、総司朗と呼ばれた男は肩をすくめると少し離れた窓際のイスに足を組んで座った。


「桜、腕を出しなさい」


看護師が近づき、注射器ののったトレーをデスクの上に置く。
採血も看護師任せではなく蒼真が自らやる。


チクッとしただけで桜の血がどんどん注射器の中へ吸い込まれていく。


「あとは心電図と、レントゲン、尿検査だな」


心電図、レントゲン技師は女性なので蒼真は安心している。
しかし、ここでの診察は総司朗に任せたくなかったのだ。


「君、案内してくれないか」


蒼真は看護師に頼む。


「はい。どうぞこちらへ」

「桜、彼女に付いて行きなさい」

「はい」


桜は総司朗に軽く頭を下げて看護師の後に付いていった。


検査が終わり、ロビーに戻ると真琴が桜の姿を見て立ち上がった。
手に桜の白のコートを持っている。

< 174 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop