御曹司の溺愛エスコート
「少しだけ待っていてくれ。出かけよう」

「お仕事が……」

「今日はそのつもりだったんだよ」


蒼真が桜に向ける甘い笑みを真琴は見ながら笑いを堪えていた。


今日はオペが入っていなかったが、診察した桜とこのあとも過ごしたくなった蒼真はスケジュールを調整するよう真琴に指示したのだ。


******


「どこへ行くの?」

「携帯を買おうと思ってね」


隣に座った桜をちらっと見て言う。
桜の返事は頷くだけだった。


桜の携帯を買うとは夢にも思っていないらしい。


蒼真は店の駐車スペースに車を停めると、桜に出るように言った。


携帯電話のショップに入った蒼真は口を開いた。


「好きな携帯を選びなさい」

「え? いらないです。必要ないから」

「必要なくはないだろう? 緊急の時に連絡できないのは困る」

蒼真に強く言われて桜は仕方なく選び始めた。
しかしなかなか選べないようだ。


そんな桜に男性店員が近づいてきた。


「お客様、どのような携帯電話をお求めですか?」


にこやかに営業スマイルを向ける男性に桜は戸惑い蒼真を見た。


< 177 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop