御曹司の溺愛エスコート
食べ終わったふたりは動物園に向った。


蒼真は桜の手を握った。
手袋をしていない桜の手は冷たかった。


「手が凍りつきそうなほど冷たいな」

「蒼真お兄様もね」


蒼真は握った桜の手を自分のコートのポケットに入れた。
そのままふたりは寄り添うように歩く。


真冬の寒さに動物達は活動が鈍い。


蒼真は過去に一度だけ桜と動物園に行った事がある。
あの時の桜は小学生だった。


まだ桜が秋月家へ引き取られる前。
クライン夫妻は用事が有り、桜を連れて行けなかったので蒼真が引き受けたのだ。


「思い出した……」


急に桜は立ち止まり呟く。


あの時も真冬で、寒いから暖かい場所へ行こうと言う蒼真に、桜は絶対に動物園に行きたいと言って譲らなかったのだ。
寒さに出てこないライオンを絶対に見たいと言って長い間檻の前にいた。


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