御曹司の溺愛エスコート
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病院から戻った真琴は蒼真の母に呼ばれた。
応接室のソファに座っている蒼真の母はまだまだ美しい。


「真琴さん、蒼真は一緒ではないの?」


少しいらいらした口調で聞かれたが、真琴の表情は変わらなかった。
威圧的な態度は昔からだ。
真琴は蒼真に付いて、そういう人物にも対応できるようになっていた。


「はい。蒼真様は神戸へ行っておられます」

「貴方は付いて行かなくていいの?」


秘書なんだからと付け加えたいのだろう。


「はい。私は研究室で書類を整理する仕事がありますので」

「まったくどういうことなのかしら。いきなり婚約破棄だなんて。あちら様に申し訳ないったら……」


婚約破棄をしてから、息子にまだ一度も会っていない。
梨の礫(なしのつぶて)の息子に苛立っていた。



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