御曹司の溺愛エスコート
桜が目を覚ましたのはそれからしばらく経ってからだった。
目を開けた桜はぼんやりした瞳で蒼真を見た。


「桜、気分は?」

「さく……ら……?」


私の名前?
目の前にいる人は白衣を着ているのに親しげにその名前で呼ぶ。


「桜?」

「桜様?」


蒼真と真琴が名前を呼んでも反応をしない。


「私の名前は……桜?」

「自分の名前が分らないのか?」


あまりの辛さに記憶を奥底に閉じ込めてしまったのか?


低体温症にかかった場合、逆行性健忘症になることもある。


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