御曹司の溺愛エスコート
「桜様……」


目の前に南条と芳乃が立っていた。
南条一家は、唯一この家で歓迎してくれた。


「心配かけてごめんなさい。急用を思い出したので帰ります。お体に気をつけてくださいね。芳乃さん、煮物おいしかったです……」


桜は涙を堪えて挨拶すると、踵を返し玄関に向かう。


「空港まで送ります」

「いいえ、ひとりで行けます。荷物も少ないし」


ふたりを安心させるように微笑んで屋敷を出た。


******


蒼真は苛立ちを抑えながら運転をしていた。
ハンドルを握る指はコツコツとハンドルを叩いており、落ち着かない様子だ。


著名な天才脳神経外科医は手術になれば何も考えずに患者の事だけを考え成功を収めてきた。


しかし、持ち前の集中力も活かされず思考が桜に奪われている。


そこへ助手席の真琴が携帯電話を取り出す。


「はい。えっ!?……わかりました。お伝えします」


真琴は蒼真をチラッと見てから携帯電話を切った。



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