御曹司の溺愛エスコート
「何かあったのか?」


ハンドルを握りながらちらっとサングラスの奥から真琴を見る。


「桜様が空港に向かわれたと、父から」

「なんだって!?」

「急用を思い出したとかで……」


サングラスで表情が分らないが、かなり腹を立てていることが分る。


「間に合わないな……」


今は10時を回っている。
13時の研修会まであと3時間もない。
空港へ行けば研修会に間に合わないだろう。


「え?」


蒼真の言葉に真琴が聞き返す。


「だめだな……俺は……。まだ桜を忘れられない……真琴は空港へ行ってさくらを引き止めてくれないか。ホテルに部屋を取り、桜を待たせておいてほしい」


昨晩、桜が話を聞いてくれと言ったのに俺は聞かなかった。
ゆっくり話を聞くべきだった。


「私では引き止められないかもしれませんよ?」


真琴が言うと蒼真がフッと笑った。


「今の俺では桜を引き止められない。君は桜にとって姉のような存在なんだ。言う事を聞いてくれるはず」



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