御曹司の溺愛エスコート
桜がシカゴに行く日はあっという間に来てしまった。


「桜……」


蒼真はその先何を言っていいのかわからなかった。
頭の切れる蒼真でも別れの言葉が出てこないらしい。


「蒼真兄さま……」

「毎日必ず電話をする事。いいね?」


長い指が桜の頬に触れる。


「はい。必ず電話をします」


蒼真は桜を愛しそうに抱きしめて唇を重ねた。
長い口付けの後、桜の額にそっとキスを落とした。


「待っているよ」


気持ちが固まったら私のところへ戻ってくるんだよ。


心の中で言う。


桜は涙を見せまいと唇をかみ締めてコクッと頷いた。


そして迎えに来た真琴と共に行ってしまった。


蒼真兄さま……。


閉まったドアを見たら堪えていた涙が溢れ出した。


「蒼真……」
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